厚生労働省所管の検疫所で食品衛生監視員として輸入食品の安全性監視及び指導(輸入食品監視業務)を行っています。
事務所業務では、輸入業者から提出された食品の届出書類(電子データ)をもとに、食品や農薬、添加物、製造方法や保存方法などが食品衛生法などの法律に適合しているかどうかを審査します。例えば、食品の加熱の有無等で検査項目が大きく異なるため、各食品に応じた慎重な規格・基準などの適合の判断が求められます。また、窓口・電話で通関業者などと輸入相談・指導の業務も行います。届出審査によって検査が必要と判断されたものは、輸入者主体の自主検査や命令検査を行い食品衛生法に適合していることを確認します。
また、国の食品衛生監視員が行う国主体の検査業務の一つにモニタリング検査というものがあります。その一例として、大きな麻袋に入っているコーヒー豆などの輸入食品を「サシ」という道具を使って採取をします(「穀差し」といいます)。検体の採取は輸入貨物全体を代表するために統計学的に定められた開梱数に基づいて均等採取します。採取された検体は、検査課や輸入食品検疫・検査センター等に送付して農薬などの含有量を検査します。検査対象の食品には、肉や野菜、エビ・カニの冷凍食品など、低温管理が必要なものも含まれており、輸入食品の検疫が遅れると品質や流通に影響が出るため、適正かつ迅速な対応が求められます。
多くの国民が口にする輸入食品を国の最前線で監視できることに、大きなやりがいと責任を感じています。自分が審査した食品がスーパーに並んでいるのを見ると、仕事の成果を実感できます。
食品衛生学の授業や実験をはじめ、大学で学んだすべての知識が仕事に活かされています。 特に、大学の授業では、物事の見方や捉え方を重視して教えてくださったので、日々の審査業務に役立っていると感じます。
※食品衛生監視員(国家公務員の場合):全国の主要な海・空港の検疫所において、輸入食品の安全監視及び指導(輸入食品監視業務)、輸入食品等に係る理化学的、微生物学的試験検査(試験検査業務)などの業務に従事します。
入学当初はコロナ禍で講義科目がすべてオンラインでしたが、対面形式の実験・実習があったおかげで、定期的にクラスメイトと顔を合わせることができ、救われました。3年生の頃まではアルバイトや臨地実習なども含め、大学内・外で色々なことを経験して吸収し、将来に繋げようと過ごしていました。その経験があったので、4年生のときには「食品衛生監視員になる」という目標に舵を切って、突き進むことができたと思います。
大学のクラスメイトや先生方との絆は、私にとって大切な財産になりました。定期試験の勉強が面倒臭いと言いながら友達と遊んだことや、4年生での就職活動、卒業研究、国家試験など、クラスメイトや先生方と過ごした日々のすべてが大切な思い出です。
卒業研究では、食品衛生学研究室のメンバーと協力して昆虫食の残留農薬を分析する方法の開発に取り組みました。この研究を通して、主体的に取り組む姿勢が身に付いたと思います。また、研究以外でも研究室メンバーとの何気ない会話が、就職活動や国家試験勉強の支えになりました。
1,2年生の時に食品衛生学の講義や実験があり、担当の平原先生から食品添加物の必要性やリスク管理、食品衛生監視員の仕事内容について知る機会がありました。民間企業にも衛生管理部門はありますが、私は責任重大でも日本の食の安全を守る仕事がしたいと思い、食品衛生監視員を目指すことに決めました。
同じ学年で公務員試験を受けたのは私1人で、試験勉強は大変でしたし、他のクラスメイトとは就職活動の方法や時期が異なったため、不安はありました。それでも、先生方やクラスメイトから応援してもらい、とても励みになりました。
食品衛生監視員採用試験(国家公務員)には1次試験(筆記試験)と2次試験(面接)があります。1次試験では、マークシート方式の基礎能力試験として40問、記述式の専門試験として3問が出題されます。私は3年生の夏頃から基礎能力試験の勉強をやり始め、3年生の終わり頃(1月〜2月)から専門試験の勉強を本格的に始めました。基礎能力試験は書店で販売されている公務員試験対策の問題集や参考書を使いました。
専門試験では、食品化学、分析化学、微生物学、毒性学、食品衛生学、公衆衛生学の問題から3科目(3問)を選択して解答します。私は人事院に過去問を請求し、その過去問を使って網羅的に対策をしました。食品衛生監視員採用試験の配点は、基礎能力試験25%、専門試験50%、面接25%となっており、専門試験は配点比率が大きいため、手が抜けません。専門試験には模範解答がないため、分からないことは専門科目ごとに学内の先生方に何度も質問したり、過去問の解答を添削していただいたりしました。1次試験は収容人数100人ほどの会場で行われましたが、本番までに十分な対策をし、自分の力を信じれば、それほど緊張せずに済むと思います。
私は公務員試験の受験だけでなく、民間企業の就職活動も並行して行いました。民間企業の面接に慣れておいたことで、公務員試験の2次試験(面接)では落ち着いて受け答えができたと思います。2次試験の面接官は3人で、各面接官から1〜3つ程度、主に人柄を見るような質問をされました。公務員試験合格後に採用面接がありますが、それも基本的には人柄を見る面接でした。
筆記試験については合格することが前提なので、採用の決め手はやはり面接ではないかと思います。面接で日本の食品衛生を守るために働きたいことをしっかり自分の言葉で伝えることが大切です。元食品衛生監視員の平原先生からも面接について色々なアドバイスをいただきました。公務員試験に限らず、面接では人間性や人柄を見られると思います。普段から笑顔の方や明るい方、真面目な方は面接でそれが伝わるように振る舞ってください。
4年生になってすぐに模擬試験があるため、その対策として国家試験の勉強を始めました。それ以降は模擬試験ごとに、点数の伸びなかった科目を中心に1日2〜5時間程度勉強しました。ただし、公務員の1次試験が6月にあり、その後も8月中旬に最終的な合格が出るまではなかなか国家試験の勉強に身が入りませんでした。
公務員試験合格後は、模擬試験や過去問、レビューブック(参考書)などを使って勉強しました。基本的には国家試験の過去問や模擬試験で出題傾向を掴むところから始めるのが良いと思います。最終的にどこまで勉強する必要があるのか、整理してから勉強することが大切です。
食品栄養学科は国家試験を受験する学科であるという性質上、必要な単位数や勉強時間は他の学科に比べてかなり多いと思います。正直なところ、国家試験のない学科を羨むこともありましたが、同じ学科の仲間と共に国家試験を乗り越える経験ができることは食品栄養学科の魅力の1つだと今は感じています。現在学んでいる座学は、将来の職業によって活かされる度合いは異なりますが、学ぶ姿勢や勉強の方法を身につけることは、将来の自分に大きな影響を与えます。在学生の皆さんには、臨地実習や就職活動、卒業研究、国家試験などを仲間と一緒に楽しみながら乗り越えることで色々な学びを得て欲しいと思います。後輩の皆さんを心から応援しています!
私は食品衛生監視員として、これまで日本で安全に食べられてきた食品が、これからも安心して食べられるように責任感を持って働きたいと思います。
山中君は、私が担当する2年生の食品衛生学実験の時に、将来、国の食品衛生監視員になりたいと夢を明確に伝えてきました。その後、私のゼミ配属後においても常に目標に向かって努力を継続してきました。先輩がいない1期生として悩み、立ち止まるところも多かったと思いますが、教員・仲間とも連携・協力しながら、管理栄養士と国家公務員の資格を見事に手に入れました。この努力は、社会に出てからも貴重な糧となると思います。これらの経験を生かして国の食品衛生監視員として我が国の食品の安全を守るとともに、益々活躍することを期待しています。卒業後、大学にも立ち寄り、後輩たちにエールを送ってください。
食品衛生学研究室 平原 嘉親 教授